みかじめ料「払わない」~暴力団排除

2010年8月1日、朝日新聞

資金源となる用心棒代の拒否

反社会的勢力(反社会勢力)を排除する動きが三重県内で活発になっている。三重県警も、暴力団への利益供与や施設の提供などを禁じる「三重県暴力団排除条例」の2011年度の施行を目指して、準備を進めている。

月1万円

「暴力団に『みかじめ料』として月1万円を渡していた店が、4、5年前まで大門にもありました。『困ったときは呼んでくれ』と言われてね」津市中心部の大門で飲食店を営む女性はこう話す。特に、地元以外の人が新規出店するのを聞きつけられ、要求されたという。「月1万円というのも、泣き寝入りしてしまう金額。でも、最近は暴力団の姿を見かけなくなった」と話した。

津駅前の飲食店

2007年に飲酒運転の罰則が強化されて以降、駅から遠い大門から客足は遠のき、津駅周辺に飲食店が増えてきた。これまでこのあたりでは暴力団が介入していなかったが、暴力団を取り締まる三重県警の担当者は「暴力団は資金源を獲得するため、津駅前の飲食店を新たに狙う可能性がある」と警戒する。

津駅前地区不当要求拒否宣言の街

約100ある津駅前の飲食店のうち71店舗が集まって2010年6月、「津駅前地区不当要求拒否宣言の街」(宣言の街)を結成。暴力団からの不当要求を拒否し、既に金を出している場合は中止することを決めた。

三重弁護士会が通知書

暴力追放県民センター、三重弁護士会、警察なども、不当要求をしてきた暴力団に支払い拒否の通知書を送るなどの支援をする。

スナック

宣言の街の会長を務めるスナック店主の男性(45)は、約25年前から津駅前で営業しているが「暴力団から不当要求をされたことはなく、他店のうわさも聞かない」といい、「宣言の街を結成して以降、警察が見回りに来ることも増え、恐怖心はない」と話す。 県警は今後、四日市や松阪の繁華街でも、宣言の街の結成を働きかける。

三重県警 が「暴排条例案」

三重県警は2010年5月、三重県暴力団排除条例案の概要を公表。2011年4月の施行をめざし、2010年9月に県議会に条例案を提出する。条例の特徴は、違反した暴力団だけでなく、協力した事業者など一般人にも、行為をやめるよう勧告したり氏名を公表したりする措置をとることだ。

資金提供という反社会的行為に歯止めを

三重県警組織犯罪対策課の天白修一・暴力団対策室長は「暴力団対策法は暴力団への規制だけだった。条例では、県民や事業者の責務を明確にする。暴力団を孤立させる意識を共有し、資金提供という反社会的行為に歯止めをかけたい」と説明する。

利益供与や活動場所提供の禁止
旅館やホテル

条例には、事業者が暴力団の威力を利用する目的で金品など利益供与することを禁止したり、取引先が暴力団でないことの確認に努めたりすることを盛り込む。また、三重には観光地が多いため、旅館やホテルなどの事業者が暴力団の活動と知りつつ、ホールや客間などを利用させることを独自に禁止する。

団体利用客に「聞けない」

鳥羽市の旅館業者は「暴力団に自発的に協力する旅館はいま時いない。反社会的勢力を封じ込める条例は歓迎する」と話す。一方、団体の利用客が暴力団関係者であるか確認することについては「『暴力団関係者ですか』と聞くことはできない」と困り顔だ。

事業者罰則には慎重

暴力団排除条例は、全国の都道府県で制定が進められている。佐賀県は2009年7月、福岡、長崎、鹿児島の3県は2010年4月に施行。愛媛県でも2010年8月に施行される。

福岡で山口組に初適用

福岡県警によると、2010年6月末、福岡・中洲のクラブやバーなど10数店舗からみかじめ料36万円を取っていたとして、指定暴力団山口組系組幹部の男に対し、初めて暴力団排除条例を適用した。

店側に書面で注意

福岡県の条例は、暴力団の威力を利用する目的で利益供与した事業者に対し、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」と、他県より厳しい罰則を設けている。今回の初適用では、店側が積極的に暴力団に協力したわけではないとして、書面での注意にとどめた。

三重県警

三重県警も、事業者への罰則には神経をとがらせている。天白室長は「事業者への直罰は厳しすぎる。事業者名の公表でも十分に厳しいと認識している」と説明する。

隣接の愛知に弘道会

一方、同じく2011年4月の施行をめざしている愛知県の動向を注視する。愛知県には、山口組組長の出身母体で山口組系2次団体の弘道会の本部があり、愛知県の条例が罰金や懲役などを盛り込み厳罰化すれば、三重県内に暴力団が流れてくる可能性がある。 三重県警の後藤佳樹・刑事部長は「条例の中身に差をつけないよう、歩調を合わせたい」と話している。

志摩市が幹部職員対象に講習会

2007年6月20日、中日新聞

暴力団など反社会的勢力(反社会勢力)による不当要求を防止するため、三重の志摩市役所の幹部職員を対象とした講習会が2007年6月19日、志摩市大王町波切の大王公民館で開かれた。

不当要求被害の防止

2007年度に危機管理対策相談員を新設し、不当要求防止対策マニュアルを作成したのに合わせて、職員の意識高揚を図ろうと市役所が初めて主催した。課長級以上の幹部職員ら約70人が参加した。

杉岡治弁護士

三重弁護士会民事介入暴力対策委員の杉岡治弁護士や、暴力追放三重県民センターの中世古幸男事務局次長、三重県警組織犯罪対策課の南川育生警部補が講話。

電話を早めに切る

「電話による不当要求があった場合は極力早く切ること」「暴力団関係の新聞記事をスクラップし、資料として有効活用を」など具体的な対策を話し、参加者らが熱心に聞き入っていた。